最高のパートナー
ある日の出来事・・・
ドタン!!
突然山中が教室の扉を開けて叫んだ。
「おい、みんな聞いたか!?」
「あの大海恵ちゃんが、」
「今度の新曲のプロモーションビデオの撮影にウチの中学に来るって!!」
その話が教室に伝わった途端、
「ワアアアアアア!!」
クラス中が歓喜のような激しい声援で包まれた。
ただし、ごく一部の芸能音痴やら勉強熱心な輩を除く・・・
とはいっても、清麿にとっても興味はある話だ。
しばらくすると・・・
一同が一斉に窓の外に注目する。
恵が乗っていると思われる車と、カメラを積んでいると思われる車が校庭に入ってきた。
清麿はたまたま席が窓際なのでそのまま外を見つめると言う感じだ。
車の中から恵が姿を現した・・・
「ワ〜〜〜〜〜!!」
「キャ〜〜〜〜〜!!」
「恵ちゃ〜ん!!」
もはや学校中が大騒ぎだった。
さすがにこればかりには学校側はどうしようもなく、この日は授業はなしになった。
というわけで、学校中の生徒が校庭に飛び出した。
この後、無論のことマネージャーが恵の通り道の邪魔にならないように生徒達を退けた。
「サインはだめだよ。」
「さあ、離れて離れて!!」
いくら仲の良いもの同士とは言え、この状況下で恵に手を振ることは自殺行為とされる。
それゆえに、わざと恵の視界に入らないように振り向くことにする・・・
だがしかし・・・
そんな事をしたのがトドメとなり、恵が清麿の存在に気づいてしまった。
咄嗟に手を振ると言う知り合いとして当然の行為も、この状況では非常にまずかった。
思わず恵は清麿に手を振る。
そして次の瞬間、清麿は猛ダッシュで逃げ出した・・・
なぜ逃げ出したのか?
その後の周りの反応で恵は理解した。
ちなみに、清麿が逃げたことが幸いして恵は自分に手を振ったと思う生徒が出た。
つまり、清麿には疑いがかからなくなったと言うわけだ。
あっという間に撮影の準備が終わり、プロモーションの撮影が開始された。
恵は、新曲を披露しながら打ち合わせていたかのようなダンスを踊る。
撮影の監督も、最初のうちは黙って見ていたが・・・
「カットカット!!」
「どうしたんですか?監督・・・」
「なんだかな〜・・・」
「何かが足りない気がするんだ。」
「そうだ!!」
「パートナーだ!!」
「この曲のイメージに合うパートナーが必要だ!!」
すると、監督は・・・
「おい、そこのAD。」
「今すぐ恵ちゃんにあいそうなパートナーを連れて来い!」
突然の指令だったためか、
「無理ですよ。」
という対応だった。
それに対して監督は・・・
「ここは中学校だぞ・・・」
「・・・そうだ!!」
監督はモチノキ中学の生徒達にメガホンで呼びかけた。
「我こそはと思う奴は前に出て来い!」
「男でも女でも構わない!」
たちまち大量の生徒が集まってきた。
しかし・・・
「汗臭い! 次!!」
「小さすぎる! 次!!」
「顔がダメ! 次!!」
「次・・・次・・・次・・・!!」
とまあ、このようにして恵のパートナーとなるべき人間はなかなか見つからない。
ちなみに・・・
清麿はゴダゴダに巻き込まれないように遠くから見ていた。
その時・・・
「あれ?君は参加しないの?」
さっき、監督に指令を受けたADがたまたま清麿を発見した。
「え・・・別に・・・俺は・・・」
うまく否定することができず、
「顔もよさそうだし、参加してみなよ。」
強引にひっぱられて連れて行かれた。
ほぼすべての生徒が採用されずに失格となった。
そんな中で・・・
「監督、良さそうな人を見つけてきました。」
監督は清麿に歩み寄り、ジロジロと見つめた。
そして、
「ようし、コイツに決まりだ!!」
「えええええ〜〜〜〜!!」
清麿も動揺を隠せないが、周りの驚いた声はもっとすごかった。
というわけで、清麿は恵と共にライトを浴びると言うことになる・・・
今の清麿の心境は、恵と一緒にダンスをすると言うよりも・・・
(この視線、どうにかならねぇのか・・・)
周りからの批難の視線を避けたいと言う心境でいっぱいだった。
監督にアクションなどをすべて吹き込まれ、いざスタートだ。
恵の曲にあわせ、言われたとおりのアクションをする。
しかし、困ったのはここからだ。
実を言うと監督に、
「適当にオリジナルの振り付けをつけておいたほうがいい。」
「まあ、その辺りは君に任せよう。」
と、言われていたので、清麿はどうするべきかを悩んだ。
ちょうど、曲の中で適当な振り付けを入れられるようなところに入った。
しくじれば最初からやり直し、
プレッシャーが清麿に重くのしかかる。
咄嗟に清麿は、恵の手を取って一緒に回った。
次の瞬間に、周りからの批難の視線がより一層ひどくなった気がしたが、今の清麿はそれどころではない。
そして・・・
「カット、OKOK!!」
「ありがとうありがとう。」
一発OKをもうことができたので、清麿は落ち着いた。
その直後に、一気に逃げ出した。
もちろん、怒り狂った一部の者たちはそれを追いかけた・・・
小一時間ほどした後に清麿は帰宅した。
「おかえり清麿。」
「恵ちゃんも来てるわよ。」
「えっ?」
自分の部屋に行くと、恵がそこにいた。
「恵さん、仕事は・・・?」
「今日はあれで終わりよ。」
「それより、これ。」
恵は清麿にビデオテープを渡した。
「監督さんから、撮影に使ったものをコピーしたものよ。」
「特別出演のお礼に誰よりも早く見せてあげるって。」
一番早く見たのは自分ではないのか?
そう思いつつも清麿はそれを受け取った。
「ところで、清麿君・・・」
「ん・・・?」
「今日は楽しかった。」
「あぁ、喜んでもらえてよかったよ。」
「正直、清麿君じゃないと嫌だったな・・・」
清麿はそっと恵を抱きしめた。
「別に、あの時が俺じゃなくても、」
「こうして会えたんだから良いんじゃないか?」
「そうだね。」
恵も清麿の体を抱きしめた。
最高のパートナー
End
![]()
あとがき
ずいぶんと遅れてしまってすいません。
最近とにかくいろいろなことがあり、なかなか小説を進めることができない現状です。
次のキリバンは多分3,4ヶ月はしないと訪れないでしょうが気長に進んでいけば良いです。