陰謀と決意

 

『電撃スクープ!!

あの大人気アイドル 大海恵と世界的スター パルコ・フォルゴレに熱愛発覚。

↓夜の港で抱き合う2人・・・

(ここに写真が貼ってあるものとしてください。)

学校帰りの清麿が偶然立ち寄ったコンビニで目にした記事だった。

どちらも自分にとっては掛け替えのない仲間・・・

それが仲良くするのは当然のはず・・・

しかし、清麿はどうしようもない気持ちでいっぱいになる。

(く・・・)

コンビニを出ると、そこに当人の1人・・・恵がいた。

「こんにちは、清麿君。」

「ああ・・・」

「どうかしたの?」

「いや、何でもない・・・」

さり気なく恵の横を彼は通り過ぎる。

いつもにはない反応に、恵は驚いた。

(えっ・・・)

普段なら、こうして会えたときは何か話をしてきた。

だが、何故清麿は自分を避けていってしまったのか?

(原因はもしかして・・・)

恵は清麿を探してモチノキ町を歩いてきた。

運良くコンビニの外からその姿を見つけたのである。

その清麿の姿は、何かの雑誌を見て驚愕した顔・・・

彼女はだからこそ、店内から出てきた清麿に伺ってみた。

しかし、真相はわからなかった・・・

(百聞は一見にしかず!とにかく、見てみる必要がありそうね。)

思い切って恵は店内に入る。

変装はしているものの、こういう場所に入るのは気が退けてしまう・・・

いつ何時にファンにばれるか不安になるからだ。

「え〜っと・・・」

先刻清麿が読んでいたと思われる雑誌を探す。

彼の表情の方が気になったので、正直彼女は雑誌の表紙をよく覚えていない。

(どうしよう・・・)

手当たり次第に見ていくしかない。

そう思い、片っ端から雑誌を手に取り、内容に目を通す。

そして見つけた。

「ウソ・・・・」

「何・・・これ・・・!?」

記事に関して、彼女は全く持って身に覚えがない。

そんな様子が感じが受け取れる・・・

 

清麿宅・・・

「くっ・・・何やってんだ俺は!?

あんな記事、芸能界にはよくあることだ!!

恵さんがいたんだから、直接確かめれば良かっただけじゃないか!!」

ベッドに寝そべり、先ほどあったことを思い起こす。

無意識のうちに恵を避けた自分のことを悔しく思う・・・

学校帰りにコンビニに立ち寄る・・・帰宅後すぐにベッドに寝そべる。

今までの自分からはあまり考えられない行為だ。

最も、ベッドにすぐに寝そべるという行為は、不登校時代によくやっていたことだが・・・

この日、清麿はシャープペンシルの芯が切れそうになり、買いにコンビニに寄った。

そのついでとでも言うのだろうか、恵が今どのような活躍をしているのか気になり、雑誌に手を触れた。

結果が、この有様だ・・・

偶然・・・単純に偶然が重なっただけかもしれない。

港で抱き合っていたと言うのも、ただの偶然・・・

抱擁というのは、人間の友好関係などを示す行為の1つ。

ただそれをやっていただけ・・・

ひたすらに、そう信じ込みたかった・・・

 

場所は変わって某所・・・

「よくやってくれましたね。」

「いえいえ、これくらいの事は・・・」

周りには錆びた鉄骨やら何やら、たくさんの古い資材が置いてある。

穴の開いた天井、割れた窓ガラス・・・

状況を全て考慮して考えると、誰も近寄りそうにない廃工場のようだ。

「ところで、当人たちの反応はどうでした?」

「もちろんバッチリでしたよ。

これで、彼は当分の間は、彼女に近づくことはできないでしょう。

それにしても愉快でしたね!!

パルコ・フォルゴレと大海恵・・・

それぞれの出演した映画やドラマなどで、抱き合うシーンから抜粋した物を合成しただけの偽者で・・・」

「ふふふ、確かにとてもおかしい話ですよ。

ところでそろそろ、作戦の第2段階に移りたいのですが?」

「そうですね、後始末にかかりますか・・・」

男が1人、バッグの中から黒い何かを取り出す。

「所詮彼は、ただの凡人だと言うことを教えてあげましょう。」

「頼みますよ・・・」

 

数日後・・・

ピンポ〜ン・・・

高嶺家のインターホンが鳴る。

現在、華もガッシュもいない・・・

自分が出るしかなさそうだ。

「はい、どちら様ですか?」

「清麿君・・・」

「め・・・」

向き合っているだけで、2人に気まずい空気が流れる。

「とりあえず、上がりなよ・・・

玄関で立ち話もあれだし・・・」

「うん・・・」

何だかんだで、恵を家に入れる。

仲間としての絆が壊れること・・・

それを彼は恐れた。

まだ、あのスキャンダルが本当かどうかもわからないからこそ・・・

茶の間において、恵はソファーに腰掛ける。

「あの、清麿君!!」

ピンポーン・・・

再び高嶺家のインターホンが鳴る。

「悪い、ちょっと出なきゃいけないから・・・」

彼にとって、ちょうど逃げるのにちょうどいい口実となった。

恵の話したいことはなんとなくわかる・・・

だが、もしそれが、自分にとって悪い知らせだったら・・・

そう考えると、清麿の心は重くなる。

「どちら様ですか?」

ドアを開けた瞬間、彼の心に警戒心が生まれた。

見かけは、清麿よりも少し大きいくらい・・・

全身黒服で、まるでSPのような感じを受ける人間だ。

「私はこういうものです。」

名刺を差し出し、清麿に名を見せる。

『マリンスター プロダクション  野鴨入鹿(のがも いるか)』

その名刺を一目見たときに、彼は直感した。

(恵さんに関係することだな?)

彼女はこの事務所に所属している。

だから簡単にわかった・・・

「おそらく、察しがついていると思いますが、彼女のことでお話があります。」

「彼女って・・・誰だよ?」

わざと白々しく答える。

「もちろん、そこの玄関にある靴の持ち主ですよ。

わかっていますよ、ウチの恵さんがあなたと親しいと言うことは・・・」

逃げ道は、もうない・・・

このままいけば、恵を巻き込む可能性がある。

「わかった。

だが、ここじゃ話はしない!!」

「もちろんですよ。

私も場所を変えてゆっくりと話をしたいので・・・」

男の車に清麿は乗り込む。

車種はフェラーリ、いかにも金持ちであると言うことを自慢しそうな車である。

しばらく彼らは、これに乗って移動する。

 

そして・・・

気がつくと、そこは崖になっている場所であった。

崖の下は海であり、落ちたら助からなさそうな深さだと思う・・・

「ここなら誰も来ないでしょう・・・」

「ああ、話は何だ?」

唐突に男に問いかける。

すると次の瞬間!!

ダン!!

清麿の肩を弾丸が貫いた。

「手っ取り早い話で、あなたに消えて欲しいんですよ。」

撃たれた右肩を抑えながら彼は問う。

「何故だ!!何故こんなことをする!?」

対する入鹿の返答は・・・

「お前は一般人のくせに、アイドルの恵に近づきすぎた。

絶望しながら死んでいく・・・それが当然の報いだ。」

彼の口調はまるで、全てを知っているような言い方だ。

そう、この数日間に起きたことの全てを・・・

「まさか!?あれは!!」

「そうだ、俺がマスコミと協力して作ったものだよ。

2人が出演したそれぞれの映画やドラマから、それぞれにあった抱き合うシーンを抜粋して作った偽者だ。

まあ、お前は簡単に信じ込んでくれたおかげで助かったがな・・・」

恵に身に覚えがなかったのはこのためである。

本人達の知らない間で作られた以上、本人が知るはずもない。

「俺と恵さんを近づけさせないためにそうやったのか!?」

「ああそうだ。

お前が恵と仲良くなったおかげで、各種スキャンダルで密かに取り上げられようとしている。

それに圧力をかけて口止めしているから、まだ世には出回っていない。

だが結果的に、ウチの事務所は損をしているんだ!!」

彼はそんなことは全く知らなかった。

ただ自分達が幸せならば、それでいい・・・

心の中でずっとそう思ってきたから・・・

「だから俺は、あるマスコミと契約した。

マスコミ側は、ウソの記事をでっち上げることで、パルコ・フォルゴレとの接触の機会を増やす。

俺はお前を始末する代わりに、今までのスキャンダルは全て水に流してもらう・・・」

「どういうことだ?」

スキャンダルを水に流すと言うのはわかる。

しかし、フォルゴレと接触する機会を増やすと言うのはどういうことなのか?

「そこの会社は、彼と接触することで大いに利益を与えようと言うことを考えていた。

何といっても世界的スターだ。彼の記事を積極的に日本で出版できれば大もうけできる。

そしてウチの事務所は、よくイタリアの各種スターと積極的に面会を行っている。

だからこそ、契約したわけだがな・・・

その上で、邪魔になるのが・・・」

「俺と言うわけか・・・」

入鹿は黙ってうなずく。

「偽のスキャンダルをでっち上げたところで、いつかはそれがばれて、お前と恵の仲が元に戻る可能性がある。

それを防ぐために、俺はお前を始末しなければならない。

まあ、凡人である貴様が、日本のトップアイドルに近づいた罰だ!!」

後ろは海・・・逃げ場はない。

「待て!!もし殺せば、すぐに捜索願が出る。

そうなれば、この事が知られる可能性が高いぞ・・・」

「やはりバカだな・・・

俺はそのために、ここにお前を連れてきた。

殺した後、海に捨てるためにな・・・

この辺りに捨てれば、まず死体は海上に上がらない。

つまり、このことがばれる心配はない。」

銃口が清麿に向けられる。

(ここで死ぬわけには行かない!!)

「何だと!?」

彼は崖に向かって走った。

そして・・・

「馬鹿め・・・

この辺りは流れが急な上、水深が結構深い。

落ちたら、まず助からない!!」

拳銃をスーツにしまう。

「まあいい、これで仕事は完了だ。」

入鹿はその場を去っていく・・・

 

「う・・・」

清麿は目を覚ます。

不思議なことに、体は濡れていない・・・

ただ、やたらと体が痛いという感覚がある。

「目が覚めたかい?」

「わああぁぁぁ!!」

「失礼だね!人を化け物みたいに・・・」

自分の真横には、50代くらいのおばさんがいた。

「あなたは・・・?」

「私は、こういう者だよ。」

この日、2回目となる名刺だった・・・

再び、清麿は名刺を見て驚愕する。

『マリンスター プロダクション  社長』

(この人が、恵さんの事務所の社長・・・)

とても外見からは想像ができない。

「ところで、何で俺は助かったんですか?」

改めて中を見渡すと、和室のようなそうでないようなつくりの部屋にいる。

「上を見てごらん。」

見つめると、屋根に穴が開いていて空がはっきりと見える。

明らかに、自分がぶち破った後だ・・・

「君がこの岬に連れて来られたのは聞いてるよ。

だから、私の屋形船を使って助けに来たのよ。」

(助けてもらったのはありがたいが・・・

何で屋形船なんだよ!?)

命の恩人に直接ツッコミを入れるのはまずいと思い、心の中だけで済ます・・・

「そういえば今日・・・恵ちゃんが引退を宣言したわ。」

「えっ・・・」

「あなたと1人の人間として付き合えるようになりたいんですって・・・

反対はしなかったわ・・・彼女が苦悩の末に選んだ道だから。」

「俺と・・・1人の人間として・・・」

「それだけ、あの子のあなたに対する思い入れは強いのよ。

だから、大事にしてあげなさい。」

「はい!!」

その女性は、きっと恵がアイドルとしてデビューした当初から、彼女を大事に思ってきたのだろう。

だからこそ、彼女の幸せを選んだに違いない。

そんな恵の決意を、否定することなどできるはずがなかった・・・

「ところで・・・」

「入鹿のことなら、心配ないよ。」

言いたいことは、彼女にはわかっていた。

「あいつが契約していたっていうマスコミの団体は逮捕したし、あいつも今日中には捕まるわ。

それよりもあなたは、彼女の元へ行ってあげなさい。」

「わかりました・・・」

 

高嶺家に戻り・・・

「清麿、そのケガはどうしたのだ?」

既に帰宅していたガッシュが清麿の肩のケガを気にかけた。

「大丈夫だ・・・それより!!」

恵のことを気にかけた。

自分のことを誰よりも想ってくれていた彼女のことを・・・

「恵さん・・・」

「清麿君・・・」

彼女はずっと待っていた。

彼のことを・・・

肩の痛みなど、清麿にはもうどうでも良かった。

ただ近寄って、恵のことを抱きしめた。

そして、ただ一言・・・

「好きだ・・・」

「私もよ・・・」

互いの想いを伝え合い、唇を重ねた。

心の底から、相手のことを想っていることを示す行為をしたのだ。

 

陰謀と決意

End

 

あとがき

久しぶりに、書いていてとても楽しかったです。

ようするに、私の場合小説の長さはどれくらい書くのを楽しめたかによるんですよね・・・

何だかんだで、終わり際は私がよくやる展開になりました。

Back


[PR]看護師の好条件求人なら:転職のプロがサポート!年間5万人が利用