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待つことの悦び

 

2月14日・・・

世間で言う、バレンタインデーという奴だ。

とは言え、まずはこの1日前の話・・・

「うん、じゃあまた明日。」

『来るまで、何時間でも待ってるから。』

「ちょっと大げさよ。」

『あ・・・ごめん・・・』

「それじゃあ、お休み。」

『ああ、お休み。』

ガチャン。

2月13日の夜、恵と清麿が電話で会う約束をする。

当然といえば当然だが、こういう日に会う約束をするというのは、あった後にすることは決まっている。

もちろん、恵のすることも決まっているわけだ。

「さぁ、今日は頑張らないとね!!」

恵が立っているのは台所、

何をするのかは、もはや言うまでもない。

「ねぇ、何してるの?」

「明日の女の子のためのイベントの準備よ♪」

「それって、何をやるの?」

「実はね・・・」

 

そして、運命の2月14日。

「さてと、そろそろ行かなきゃ。」

恵とティオが、マンションのドアを開けて外に出た。

恵はもちろん、ティオはそのまま清麿の家に遊びに行くつもりだ。

そんな時・・・

「あ、恵ちゃん。」

「マネージャーさん!?」

突然、恵の前にマネージャーが現れた。

「実は今日、突然バレンタインの特番の収録が入っちゃって・・・」

「今から来てもらえる?」

「は・・はい・・・」

「ごめんね、せっかくの休みの日に。」

「なるべく早く終わらせてもらえるようにするから!!」

(まだ時間に余裕はあるから、早く終われば・・・)

そう思う、恵である。

さすがに、大事な人を待たせるのは気まずいと思い、恵は予定よりも早く出ている。

幸い、スタジオは待ち合わせ場所のすぐ近く。

早く終われば、少し遅刻する程度で済む・・・

しかし、世の中そんなにうまくはいかなかった。

焦ったためか、いつもの恵にはないようなカットが重なってしまう・・・

ふと時計をみる恵・・・

(大変、約束の時間をもう1時間も過ぎてる!!)

(清麿君、帰っちゃったかな・・・)

不幸なことに携帯を忘れてしまい、清麿に連絡が入れられない。

これは、恵にとってとんだ災難である。

すると、意表をついた質問が司会者から飛び出した。

「恵ちゃんは、本命のチョコレートをあげる人はいるの?」

「えっ・・・・!?」

恵にとって不幸の連続である。

もし、今密かに楽屋に隠しているチョコレートの存在がバレればまずい・・・

下手に事実を言って、清麿とのことがスキャンダルになれば迷惑をかけてしまう。

だからといって、否定すれば清麿に申し訳ない。

まさに、恵には苦渋の選択を迫られることになる。

「えっと・・・いません・・・」

「そう?」

「別に、隠す必要はないんだよ?」

「本当にいません!!」

恵は、スキャンダルになることの方を避けた。

 

結局、暗くなってからようやく開放された。

「もう約束の時間から4時間も過ぎちゃった・・・」

「清麿君・・・怒ってるだろうな・・・」

外には珍しく雪が降っていた。

ゆっくりと約束の場所へと足を運ぶ・・・

約束の時間を4時間も過ぎてしまったのだ。

もう、相手はいないと考えて間違いない・・・

約束の場所・・・

恵はそこに目をやる。

そこで見たのは・・・

「えっ!?」

清麿が、寒さに凍えながらもずっと立っているのが見えた。

「恵さん?」

恵の存在に清麿が気がついた。

そんな清麿の姿を見た恵は、いきなり逃げ出した。

「恵さん!!」

慌てて清麿は追いかける。

幸い、すぐに追いつくことができた。

「何で逃げるんだ!!」

「だって・・・私・・・」

「約束に4時間も遅れちゃった・・・」

「急に仕事が入って、断りきれなかった・・・」

今の恵には、物凄い後悔があった。

連絡もせずに、4時間も待たせてしまったことうぃ・・・

「良いんだよ。」

「何時間でも待ってるって言ったし、」

「それに、恵さんはちゃんと来てくれた・・・」

「清麿君・・・///」

「さあ、行こうか?」

「うん・・・///」

 

いろいろとありながらも、2人はデートを開始した。

まず2人は、喫茶店に入る。

「とりあえず、体を温めないとね。」

「あ・・うん///」

普通なら、向き合って座るところ・・・

それを恵は、あえて清麿の横に座った。

そっと清麿の手を取り、自分の体温で清麿の体を温めた。

その調子でしばらく待っていると、コーヒーが運ばれてくる。

「おいしいね、これ・・・」

「ああ・・・」

熱いコーヒーを口に含み、更に2人は寄り添う。

そして、2人は喫茶店を後にする・・・

だいぶ時間が経っているため、そんなに長い時間は一緒にいられない・・・

清麿の帰りの電車についての時間の心配をしなければならない。

「今度は、映画でも観に行こうか?」

「うん・・・///」

2人は映画館に入った。

前もって清麿は前売り券を購入しており、上映時間にはギリギリ間に合った。

映画のジャンルは恋愛・・・

普段の清麿なら、けして見ないであろうと思われる映画だ。

そんな清麿でも、雰囲気作りのために努力した

と言ったところだ・・・

映画の上映中も、2人は手をつないだまま離さない・・・

それほど、恵にとって清麿に会えなかった4時間は大きかった。

また、清麿にとっても恵を待ち続けた4時間はそうとう辛かったのだろう・・・

待つことによって、2人はその想いを更に強めたのだ。

 

映画も終わり、時間も限界に差し掛かった。

たまたま電気屋の前を通りかかり、そのテレビで天気予報が見えた。

『本日、関東地方に大きな寒冷前線が接近しており、』

『今晩から明日にかけて、大雪となる見込みです。』

『なお、雪の影響で、以上の電車が停止するとの発表です。』

最悪な状況なのか、最高の状況なのか?

清麿の帰りの電車も含まれていた。

「参ったな・・・」

「これじゃあ帰れそうにないな・・・」

「じゃあ、今夜は私のところに泊まる?」

「ああ、仕方ないけど・・・」

だが、そんな時に2人を引き裂く出来事が起こった。

清麿の目に、とあるテレビ番組が留まった。

「あれ、これって恵さんじゃ・・・?」

「えっ!?」

「あ・・・」

恵が急に出演することになった番組が放映されていた。

しかも・・・

最悪なところだった・・・

『恵ちゃんは、本命のチョコレートをあげる人はいるの?』

『えっ・・・・!?』

『・・・いません・・・』

『そう?』

『別に、隠す必要はないんだよ?』

『本当にいません!!』

それを見た清麿は・・・

「ごめん・・・」

「やっぱり俺、その辺のホテルに泊まるよ。」

「恵さんに迷惑かけちゃいけないし・・・」

「1泊くらいなら、なんとかなる。」

そう言って、清麿は走っていった。

明らかに嘘をついている。

恵の心には、深い罪悪感が生まれた・・・

最後は、スキャンダルにならないためということを選んでしまった自分に腹が立った。

このままでは、ずっと清麿に合わせる顔がない。

すぐに恵は清麿を追いかけた。

一番近いホテルに行ってみたものの、清麿の姿はなかった。

従業員に聞いても、そんな人は来ていないと言い返される・・・

まだ、どこかその辺にいるのではないか?

考えをまとめ、そこら中を探し回った・・・

しかし、それでも清麿は見つからなかった。

「もしかしたら、電車が動いて帰っちゃったのかもね・・・」

諦めて恵はマンションに帰った。

 

マンションの入り口まで着いた時、恵は運悪く滑って尻餅をついてしまう・・・

「痛・・・」

「いたたたた・・・」

ケガはなかったが、もっと酷いことが起こった。

「大変!!」

せっかく作ったチョコレートを、うっかり押しつぶしてしまったのだ・・・

だが、もうそれを食べてくれる人もいない・・・

恵は深い悲しみに満ちた。

これから、大切な人を裏切ってしまった罪悪感という十字架を背負って生きていかなければならない。

そう思った恵は、非常に心が痛々しかった。

そして、悲しみのあまり泣き出した。

すると・・・

いきなり頭上で降り注いでいた雪が止まった。

顔を上げてみたが、雪は降り続けている。

つまり、自分の頭上に何か上がるのだ・・・

雪をさえぎる何かが・・・

ふと、真上を見てみる・・・

「こんなところにいると、風ひくぞ。」

清麿が傘をさして立っていた。

「清麿君!?」

「どうして・・・?」

「1つだけ、ハッキリさせておきたかったことがあってな・・・」

しばらく間がさした後、清麿が再び口を開いた。

「どうしてあんな嘘をついた?」

「それとも、恵さんにとって俺は、その程度の人間だったのか?」

「それだけはハッキリさせないと、」

「俺はどうして良いかわからない!!」

まだ、自分は清麿に見放されていなかった。

もし、もう1度清麿に会えたのなら、

ちゃんと謝りたいと思っていた・・・

「ごめんさない!!」

「私・・・本当の事言ったら、清麿君に迷惑がかかると思って・・・」

「言えなかった・・・」

「でも・・・そのことが清麿君を逆に苦しめちゃった!!」

「私・・・どうしたら良いか・・・」

苦しむ恵を、清麿はそっと抱きしめた。

「本当の気持ち・・・」

「教えてくれてありがとう・・・」

「好きだ・・・」

「私も・・・」

2人は顔をあわせ、唇を重ねる。

「ん・・・」

「んぅぅ・・・」

 

そして、結局・・・

「ふう、それにしても、ティオも帰れなくなったとはな・・・」

「今夜は、私達2人だけってことよね?」

「ああ・・・」

清麿は恵の家に泊まることにした。

「ところで・・・清麿君・・・」

「ん?」

「実は・・・チョコレート・・・」

「潰れちゃったんだ・・・」

「それなら心配ない。」

恵の手から潰れたチョコレートを取り、包みを取って一気に口に運ぶ。

それをじっくりと味わい、飲み込む。

けして、まずそうに食べる人間の顔はしていない。

むしろ、とてもおいしそうに食べていた。

「やっぱり、愛がいっぱいだ。」

「清麿君・・・///」

その夜、清麿は恵と幸せな夜をすごした。

 

待つことの悦び

End

 

あとがき

うわ〜、リクエストされた肝心なデートの部分がほとんど描けていない!!

それにしても・・・いまどき古いスタイルの小説かな?(電気屋の外から見えるテレビなんて・・・)

とりあえず、今年のバレンタイン小説はだいたいこんな感じで飾るわけですね・・・

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